企画展「知られざる富士山」アーカイブブック

自然は時として地震や噴火、土砂災害、洪水などの猛威を振るいます。それら自然の脅威は、尊い人命や財産を不条理に奪うことがある反面、雄大で起伏に富む峻険な地形を生み出し、豊かな生態系や大地の恵みをもたらす源泉にもなっています。
日本の最高峰である富士山は、有史以降も噴火を繰り返してきた活火山です。かつてその噴火により、人々の生活は幾度となく危機にさらされてきました。しかし、人々は富士山に対して畏敬の念を抱きながら、同時に信仰の対象として大切に崇めてきました。
水の循環もまた、富士山の自然を象徴する重要な要素です。富士山麓には湧水がいたる所にあり、その存在は、地域の歴史的・文化的な景観形成に影響を与えてきました。陸水域では湧水環境を好む水生生物が独特な生態系を形成し、海底では駿河湾から湧き出す伏流水が多様な海洋生物を育んでいます。富士山の豊富な湧水は農林水産業や製紙業などの産業をも創出し、地域の発展に寄与してきました。
富士山がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の世界文化遺産に登録され、2023年に10周年を迎えました。本書はふじのくに地球環境史ミュージアムにおいて2023年7月15日~10月22日に開催された「知られざる富士山」展の内容を再構成し、掲載したものです。本書が富士山の自然に興味を抱き、深まる機会となりましたら幸いです。
- 執筆
- 岡宮久規・小川滋之・岸本年郎・渋川浩一・中西利典・西岡佑一郎・早川宗志(ふじのくに地球環境史ミュージアム)
- 編集
- 早川宗志(ふじのくに地球環境史ミュージアム)・小林淳(静岡県富士山世界遺産センター)
- デザイン
- 青木真理子(ふじのくに地球環境史ミュージアム)